『DEDEkit(デデキット)』は手を使いながら考える楽しさを伝えるワークショップキット。「手を動かせば頭も動く」を合い言葉に、これから想定される人生の課題に対して、前向きに主体的に捉え、自らの手と頭を使って解くための練習問題。『一刀切り問題』、『レイヤーの彫刻』、『3×3×3 立体パズル』の3つのラインナップ。
企画・監修・アートディレクション:
佐藤 雅彦+木村 稔
発行:美術出版エデュケーショナル 2016年12月
詳細:http://www.bijutsu.biz/item/dedekit
Project
今日、一般的に美術(作品)というものは、画廊や美術館などの場で発表・展示され、鑑賞されていると思います。おそらく観衆のほとんどは、「美術」という概念のなかで「鑑賞する」という目的でそういった場へ足を運んでいると思います。しかし、「鑑賞する」という意思がなく「美術に出会う」という場合も考えられないでしょうか。例えば、日常的な空間の中で何らかの行為により一つの差異を創り出すことによって…。
そこで「パーキングメーター(エリア)」という現代社会が生み出した交通システムを利用して一つのプロジェクトを企画しました。本来、その場は、一時的に車を駐車させるために公共の路上に設置されているものです。しかし、現実にはほとんどの車が違法(指定時間以上駐車する、もしくは料金を支払わない場合)に駐車しています。そして、そのシステムが設置されていない所まで、大量生産された車であふれています。また、画廊街でもある銀座という地は日本で最も地価が高い地域にもかかわらず、そのシステムは60分300円で利用できます。
そういった状況の下で、ある意味で法に守られた中で制作・展示を行い、その時起こる様々な現象や問題も含めて一つの作品として、単なる発表・展示・鑑賞の場の問題としてでなく、「美術」という概念が、私(個)や社会(全体)にどのように関わっていくのか考えていきたいと思います。
私たちのまわりには「非常口」というサイン(ライト)が公共施設などのなかでいたる所に存在しています。基本的にはほとんど皆同じ形態をしており、いざという時の為にいかなる時でも煌々と光り輝いています。
店舗などの商業空間から駅構内やトンネルなどの施設はもちろん、美術館や画廊などの展示空間にもそのサインは存在しています。
特に展示空間などのなかでは作品以上に主張していたり、それがあるが故に作品を本来設置したい場所に設置できなかったりするなど、どことなく、作品展示において邪魔者扱いを受けている「非常口」というサイン。
そこで、そのサインというものを逆に利用して「美術館」などの空間に侵入するプロジェクトを考えました。
普段、何気なく目にしている物を利用することによって、ある意味での制度としてだけでなく、日常的なレベルの中での、ものというものの在り方を探りながらプロジェクトを進行していきたいと思います。
何気なく街を歩いていると道端に「ビールケース」が積んであるのを目にします。注意してよく観てみると、それは全くの路上であったり、一年以上もそこに積んであったりと、一種の仮設物として街の中にとけこんでいたりしています。
商品の運搬・販売・保存・回収などの一つの流通システムとして百年以上もの歴史があり、回収率が9割を超えるビール瓶。しかし、最近は、製造エネルギーが瓶の5分の1といわれる缶が主流になってきています。
「ビールケース」の山の存在は、それ自体だけでは成り立っていません。 瓶ビールという商品があって、そして流通(回収)というシステムがあって初めて重要な役割をしています。
そんな「ビールケース」を一つのサイクルとしてでなく、作品の素材として利用したいと思います。実際に放置(積まれている)されているものと、意図的に設置されたものとが都市のなかで入り交じりながら、全く個人のアートのプロジェクトを進行させていきます。
日々の生活に於いて、私達が自由に利用できる場所は、数多く在ります。そして、そこを利用する為には必ずルールというものが同時に存在しています。しかし、そのルールというものには、かなりのキャパシティがあり、大抵の場合どこまでがルール内で、どこからがルール外なのかはっきりしていません。
例えば「ごみ集積場」という場所は普段は通常の道路でありながら決められた日時の間だけごみを集積する場所へと変化していきます。特にここ最近はごみ収集に関するルールも厳しくなり以前よりルールを無視したごみの出され方は減ってきました。しかし、未だに夜中にごみを出したり、近年急増してきたカラスへの対応などまだまだ問題はたくさんあります。
そこで今回はその「ごみ集積場」をある種の定点観測的な方法論を用いて一つのプロジェクトを行いながら単に「ごみ集積場」だけの問題としてではなく、個人の行為というものが社会の中でどこまで可能なのか、そして、その行為を通して主体と客体(作品と観衆)の関係-美術というものの在り方-を問いながらこのプロジェクトを進行させていきたいと思います。
銃とビデオカメラが向かい合って展示。鑑賞者が銃のスコープを覗くと、自動的に写真が撮られ、プリントアウトされる。(プログラミング:藤田至一)
傘を置く権利を利用し、傘に液晶モニタを取り付け、美術館の傘立てで上映。映像はUHFの電波にて送信。
Tシャツに袋を縫い付け、金魚を飼育。常に金魚と行動を共にするプロジェクト。都内を散策。
Design
1991年頃より主に美術関係の印刷物制作に携わり、展覧会図録や作品集などの編集作業からレイアウトデザインを行う。1995年頃からは、セールス・プロモーションに係わるキャンペーンの企画およびデザイン、店頭用宣材やトレード(流通)向けの制作、各種広告のデザイン、企業広報誌や定期刊行物の編集デザインなども手掛ける。1999年からは東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科や大学院 映像研究科にて広報関係の編集やデザインを担当。また、サイン計画やCI計画に伴うロゴデザイン、書体開発なども行う。
Workshop
自分のまわりにあるものなんでも、重ねて綴じたら何になる? 本のつくりや中身の並び方、身のまわりのものが本になる不思議な「製本」の方法を学んで、オリジナルテーマの本づくりに挑戦。完成した作品は階下の中央図書館で展示。
川口市メディアセブン 対象:小学4年生〜大人
2007、2008、2009、2010、2014、2015年
2017年1月
[一刀切り問題]佐藤雅彦+木村稔
青山ブックセンター本店
2017年7月
[レイヤーの彫刻]佐藤雅彦+木村稔
サマーアートキャンプ 2017 四谷ひろば(CCAAアートプラザ)
主催:NPO法人市民の芸術活動推進委員会 (CCAA) 後援:東京都図画工作研究会、全国造形教育連盟
2017年4月
[3×3×3 立体パズル]木村稔
川口市メディアセブン(対象:小学4年生〜)
2017年11月
[3×3×3 立体パズル]木村稔
こども大学川口(対象:小学4年生〜)
きむら・みのる ◎ 広島生まれ。91年にパーキングメーターを利用したプロジェクトを発表。以後、法律やルールの狭間を利用した作品を展開するとともに、映像メディアの研究から紙メディアのデザインや製本ワークショップを行うなど多岐にわたり活動。主な展覧会に92年「国際テレビビデオフェスティバル」(スパイラル)、95年「日本の映像」(福井県立美術館)、「EXIT」(広島市現代美術館)、96年「AtopicSite : On Camp/Off Base」(東京ビッグサイト)など。2016年「DEDEkit 考え方のワークショップ」(佐藤雅彦+木村稔)出版。現在、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻 助教。
主な展覧会(プロジェクト)
1991 「Tokyo, Parking PROJECT」(銀座三原通り、東京)
1992 「第3回 国際テレビビデオ・フェスティバル」(青山スパイラル、東京)
1993 「TV Parasol Project Tour」(都内各所)
1994 「新宿少年アート」(新宿歌舞伎町、東京)
1995 「日本の映像(イメージ)」(福井県立美術館、福井)
「Art Picnic in Tsukui」(津久井町、神奈川)
「EXIT」(広島市現代美術館、広島)
1996 「ERDWALL-HUNENSTEIN」(メックリングベルグ、ドイツ)
「アトピック・サイト: On Camp/Off Base」(東京ビッグサイト、東京)
1997 「EXIT」(プラザ・ギャラリー、東京)
1998 「加害/被害」(板橋区立美術館、東京)
1999 「Standing in the Future」(テレコムセンター、東京)
「Gomi SyuuSyuu Schedule」(k.a.g.g. at winds Garally、東京)
2000 「スキマ プロジェクト」(コマンドN、東京)
「金魚プロジェクト」(Forum Art Shop エキジビジョン・スペース、東京)
2001 「スキマ プロジェクト_02」(秋葉原-神田、東京)
「30x100 マテリアルの使い方」(東京電力技術開発センター、神奈川)
「command N : Tokyo Rabit Paradise Project」(ロンドン他巡回)
2009 「explosion shirt」(explosion tokyo viewing room、東京)
2010 「City Beats + Live explosions」(BankART Studio NYK、神奈川)
主なワークショップ
2008、2009、2010、2014、2015 「あれもこれもそれも、本になるヒミツ!」製本ワークショップ (川口市メディアセブン、埼玉)
2017 「DEDEkit 一刀切り問題」(青山ブックセンター本店、東京)
「DEDEkit 3×3×3 立体パズル」(川口市メディアセブン、埼玉)、(子ども大学かわぐち、川口市役所鳩ヶ谷庁舎)
「DEDEkit レイヤーの彫刻」(四谷ひろば、東京)
2018「DEDEkit 3×3×3 立体パズル」(川口市メディアセブン、埼玉)
主な著書、論文等
2013 テクニカルノート 「マルチレイヤープロジェクションによるオペラ舞台の演出」 桐山孝司、木村稔、重田佑介、越田乃梨子、宮廻正明、松村公太、平諭一郎、映像メディア学(東京藝術大学大学院映像研究科紀要) Vol.4、No.1、pp.43-59 共著
2014 テクニカルノート 「縄文土器のための展示技術開発 デジタルファブリケーションの活用」 木村稔、桐山孝司、千葉毅、LOOP 映像メディア学(東京藝術大学大学院映像研究科紀要) Vol.5、pp.5-15 共著 左右社 ISBN: 978-4865281125
2016 「DEDEkit(デデキット)」 考え方のワークショップ 佐藤雅彦+木村稔 美術出版エデュケーショナル 共著
01【一刀切り問題】ISBN: 978-4-938242-19-0 02【レイヤーの彫刻】ISBN: 978-4-938242-22-0 03【3x3x3 立体パズル】ISBN: 978-4-938242-25-1
2018 研究ノート 「「視点の移動」をテーマとした全方位映像表現の研究」 木村稔、桐山孝司、LOOP 映像メディア学(東京藝術大学大学院映像研究科紀要) Vol.8、pp.33-46 共著 左右社 ISBN: 978-4865282078
主な参考文献
展覧会カタログ
1992 「第3回 国際テレビビデオ・フェスティバル」 発行:ビデオギャラリーSCAN
1995 「ERDWALL-HUNENSTEIN」 発行:Jan Mende
「日本の映像(イメージ)」 発行:福井県立美術館
1998 「加害/被害」 発行:板橋区立美術館
2002 「30x100 マテリアルの使い方」 発行:30×100 architects 実行委員会/いちい書房
雑誌、新聞
1992 粉川哲夫「祭の屋台的カオスを創出する」 イメージフォーラム 5月号、ダゲレオ出版
1994 村田真「街にくりだすアートたち」 BT 美術手帖 7月号、美術出版社
中ザワヒデキ「TVパラソルプロジェクト」 ガロ 4月号、青林堂
1995 インタビュー「うぇーぶ 95」 中国新聞 11月22日
「映像が語る文化現象」 福井新聞 3月11日
1996 「社会の中のアート表現とはなにか?」 BT 美術手帖 11月号、美術出版社
1998 村田真「この人に注目」 日経アート 11月号、日経BP社
1999 「Standing in the Future 展」 月刊ギャラリー 12月号、ギャラリーステーション
科学研究費補助金
2015~18 「視点の移動」をテーマとした身体装着型全方位映像表現装置の研究 基盤研究(C) 研究代表者
教育活動
東京藝術大学
2002〜06 美術学部専門基礎科目『メディアデザイン演習 I、II』、先端芸術表現科 専門科目『IMA実技I、 II、III (スタジオ講習:デザイン、エディトリアルワーク)』
2006〜 大学院 映像研究科 共通科目『メディア表現技法』
2018〜 芸術情報センター開設科目(美術学部・音楽学部)『情報メディア学』
首都大学東京(非常勤講師)
2016〜17 システムデザイン学部『2次元コンピュータグラフィックス』
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